最後は「言葉の理解」についてです。(「音の知覚」、「言語産出」もまだの人はどうぞ)
*英語が母語の赤ちゃんについての言語発達です
「言葉の理解」の研究は、動作法(act-out task)や絵画選択法(picture selection task)などで調べられます。
動作法は、意味が曖昧な文を聞かせた後、幼児にぬいぐるみを使用させ、どのような意味に理解したのかを表現させるというような方法です。
例えば「パンダがキツネを蹴りました」という文を聞かせた後、パンダとキツネのぬいぐるみを渡して表現させるというような方法です。
一方で、絵画選択法は、二つの絵を見せて、これから話す内容と一致する方を選んでもらうことで、話の内容を理解できているのかを確かめる方法です。
この二つの方法は基本的には文章の理解に対して用いる実験方法です。
似たような方法に、“the preferential looking technique”というものがあります。
この方法では二つのもの、例えば犬のぬいぐるみと猫のぬいぐるみを見せて、「犬をみて!犬はどっち?」と発すると、赤ちゃんが「犬」という言葉の意味を理解できている場合、犬の方を長く見る傾向があるため、物の名前などを理解できているのかを調べることができます。
このような方法を用いることで、生後3ヶ月の幼児が犬と猫の違いだけでなく、猫の種類に関しても識別できることがわかりました。
生後12ヶ月(1歳ごろ)になると、少なくとも10語の単語の意味を理解できていると言われています。
13ヶ月ごろには100語以上、17ヶ月では平均で180語理解していると言われています。
また、17ヶ月ごろには普通名詞と名前の識別もできるようです。
例えば、幼児に一つのぬいぐるみを見せて、”That’s Zav.”と” That’s a zav.”の2種類の文を聞かせた後、似たようなぬいぐるみからzavをもってくるようにお願いします。
“a”の意味を理解できていたなら、前者はぬいぐるみの名前を表し、後者はそのぬいぐるみの種類を表しているということを理解できるため、前者の場合は初めに見せたぬいぐるみを持ってこなければいけないのに対して、後者の場合は同じ形のものならどれを持ってきてもいいということになります。
このような実験で17ヶ月の子供は、ぬいぐるみの場合はきっちりとaの有無によって判断したのに対して、同じことをブロックを用いて行った場合、aの有無に全く期をかけなかったようです。
つまり、「ブロックが名前を持つことはない」ということを理解している証拠になったということです。
2歳ごろになると、自動詞と他動詞の区別ができるようになります、
ある実験で、先ほど説明したthe preferential looking techniqueを用いて”Big bird is flexing Cookie Monster.”と “Big bird is flexing with Cookie Monster.”をそれぞれ聞かせた後、一枚はBig birdがCookie Monsterを後ろから押している絵を、もう一枚は二人が並んで行なっている絵を同時にだし、どちらの絵を長く見るのかを調べられました。
withの有無で自動詞か他動詞かが変わり、さらに意味も変わってきますが、2歳の子供は文に対応した絵を見る時間が長かったようです。
つまり、違いを理解できているということになります。
単語の学習に関して、幼児は様々な制約を用いることで単語学習を効率よく行っていると言われています。
これをLexical constraints hypothesisと言います。
それが、相互排他性(mutual exclusivity)、ファーストマッピング (Fast mapping)、事物全体制約 (whole object constraint)、分類カテゴリー制約 (taxonomic constraint)です。
相互排他性とは、「一つのカテゴリーの事物には1つのラベルが貼られる」というものです。
つまり、幼児はもしすでに「car」という単語を知っている場合、「veicle」などの類義語のようなものが存在するとは想定しません。
このことによって、「tire」などの新たな単語を学んだ時に、「car」という単語を知っていれば、「それは車自体ではなく違う部分を指す言葉なんだな」、という予測が立てられ、単語学習を効率よく行えます。
ファーストマッピンングも同じようなもので、新しい単語を学ぶ時に、その新しい単語は「幼児がまだ知らないものの名前を指している」、と考えているというものです。
先ほどの例であげると、「window」と聞いた時に、「car」という言葉を知っている場合、その言葉は車自体を指すことはない、という考えのもと学習が行われます。
相互排他性と、ファストマッピングは似ているため、研究者の中には同じものと考えている人もいるようです。
次に、事物全体制約とは、「語は部分ではなく、事物全体を指す」というものです。
例えば、幼児が初めて「car」とう言葉を学習するとき、実際の車や本に描かれているを見ながら「これはcarですよ」と学びます。
しかし、この制約がないないと、幼児は「car」という言葉がその本のページを指しているのか、タイヤの部分を指しているのか、ライトの部分を指しているのか判断できません。
したがって幼児はこの事物全体制約によって、全く知らない物体をみて単語を学習する場合、「その単語はその物体の一部分ではなく、その物体全体の名前のことである」と想定しながら学習します。
そして、物体自体の名前を学習し終えれば上で述べた他の制約により、部分的な名称の学習にうつっていくんですね。
そして最後は分類カテゴリー制約。
この制約は「語は特定の事物ではなく、同じ分類の類似したものを指す」というものです。
例えば「bus」という語を学習した子供に、(バスが入っていない)いろいろなものの中から「違うbusを持ってきて」というと、その子供は、同じ乗り物のカテゴリーで(タクシーや電車など)、教えられたバスと似た形、色のものを選んで持ってくるとい言われています。
このことから、子供は「bus」という語を、「目の前のバスだけを表している語ではなく、全体的なカテゴリーの名前だと認識した」ということがわかります。
これらの制約は全て同時期に現れるのか、または別々に現れるのかということが言い争われています。
ある研究者はファーストマッピングは2〜3歳、相互排他性と事物全体制約は3歳ぐらいにみられる、と述べられていますが、実際のところはどうかはわかりません。
生後30ヶ月〜36ヶ月ごろになってくると、ボキャブラリースパート(vocaburary spurt)とよばれる現象がみられます。
この時期になると単語量が一気に増えるんですね。
それまでは1週間に平均3語ぐらいの割合で学習していたのが、この頃になると1日あたり8〜10語学習すると言われています。
the Critical mass hypothesisという仮説によると、このボキャブラリースパートは、ある年齢に達すれば起こるというよりも、単語量が150〜200後ぐらいになった頃に起こるのではないかと考えられています。
2〜4歳あたりではMean Length of Utterance(MLU)とよばれる、子供の会話の複雑さを測る指標が急増するとも言われています。
MLUはどれだけ子供が複雑な文を作れるのかを測るための方法です。
例えば子供が “Daddy eat red apple.”という文を産出した場合、MLUはその語数である4になります。
しかし、いくら長い文を産出できたからといって、文法が無茶苦茶なら、その分は複雑であるとはえません。
なのでもし子供が”Daddy eats apples.”とい文を産出した場合には、語数は3なのですが、文法項目の三単現のsや複数形のsを正しく用いることができているのでMLUは5と判断されます。
このように単に語数だけでなく文法が適切に使用されているかも考慮に入れた点数がMLUです。
2〜4歳の子供はこのMLUが2からだいたい8ぐらいまで伸びていくと言われています。
このことから、この時期には文法の習得も徐々にはじまっているのではないかと考えられます。
wordの定義に関してもある年齢に達するまでははっきり理解できません。
5歳の子供は実際に形があるものだけがwordだと考えます。(This is a pen.の中にwordはいくつあるかと尋ねると具体的なペンだけをwordと捉えるので1つと考えるんですね)
7歳ごろになると、抽象的なものもwordだと認識し始めますが、この年齢でも、前置詞や冠詞などの機能語に関してはwordとは認識されません。
9〜10歳ごろになるとようやく冠詞などの機能語もwordとして捉えるようになります。
ってな感じで僕が調べてみた子供の発達段階について「音の知覚」「言語産出」「言葉の理解」と3つの観点からまとめてみました。
下で紹介している3つの本の全てのページを読んだわけではなく、さっと目を通して重要なところを抜き出しただけなので、抜けていることも多くあると思いますが大体はこんな感じです。
っということで今回はこれぐらいで!
幼児の言語習得に関しては以下の三冊の本を基に書いています。(クリックで詳細表示)