今回は言語習得と年齢の関係について書いていこうと思います。

言語習得と年齢の関係で必ずと言っていいいほど登場するのが臨界期仮説Critical period Hypothesis:CPH)です。

この臨界期仮説は一番初め、Lennebergという人によって唱えられました。

では、臨界期仮説とは何か。

これは、「人間には言語を学習するのに適した年齢があり、その年齢をこえると言語を習得しようとしても、完全には習得できない」という説です。

そして、これもいろいろ説がありますが、Lennebergによると、その年齢は12〜13歳ごろだということです。

「え、早っ!?」

って感じですよね 笑

そしてこの学習に適した期間と、適さなくなる期間のちょうど変わり目のことを臨界点(Critical period)と言い、言語学習に適した期間のことを臨界期と言います。

そして驚くことに、この臨界期は、第二言語習得だけでなく、母語の習得に関しても存在すると考えらえています。

臨界期仮説の研究の原点は母語習得におけるものでした。

隣家一仮説の提唱者であるLennebergは、失語症(aphasia)の人の母語の回復具合と年齢との関係について調べました。

失語症とは、病気などによって脳の一部に損傷をうけ、言葉を理解したり、話したりできなくなってしまう状態のことです。

この調査の結果、思春期(12〜13歳ごろ)までに失語症を患った患者は、ほとんどの場合完全に回復することができたのに対して、それ以降に患った患者はたいていの場合、完全には回復できなかったという結果が出ました。

その結果からLennebergは人間には思春期を境にして言語習得能力が劣っていく、と結論づけました。

この研究の後、年齢の影響は第二言語習得に関しても考察され始めました。

しかし、その前に!!

第二言語習得と年齢について考える場合にはまず学習者の学習環境を考慮する必要があります。

つまり、自然環境で第二言語として学習しているのか、または、教室環境で外国語として学習しているのか、を考慮しなければいけません。

具体的に自然環境と外国環境では何が違うのか。

自然環境とは、学習者は日常的に新しい言語を聞いたり使ったりする機会がある環境のことを指します。

海外留学などは自然環境での習得になり、そのような環境で学習されるの言語を第二言語と教室環境で学ぶ言語と区別して呼ぶことがあります。(青文字の第二言語以外は第二言語と外国語両方を含めた意味で使用しています)

一方、教室環境とは、教室の中以外ではその新しい言語を使う機会がないような環境のことです。

日本の中学や高校で英語を学習する場合は教室環境での学習になり、そのような環境で学ばれる言語のことを自然環境で学習する言語と区別して外国語と呼ぶことがあります。

母語習得の場合、必ず自然環境での習得になるため自然環境か、教室環境かということを考慮に入れる必要はありませんが、第二言語習得の場合にはこの二つを分けて考える必要があります。

そして第二言語習得で臨界期を考える際には、インプットの量が十分である自然環境での習得にのみ焦点を当てる必要があります。

完全に習得ができるかどうかを年齢別に見ていくわけですから、母語と同じような習得環境で調査しないと信憑性が低くなるからですね。

多くの研究があり結果も様々ですが、第二言語に関する臨界点も、母語習得と同じように思春期あたり(20歳ごろという説もあります)にある、という説が今の所有力なようです。

学者の中には臨界期を認めない人もいるので、今後の調査に期待と言ったところでしょうか。

個人的考えですが、僕はLennebergのいうように思春期あたりに臨界点があるのではないかと感じています。

その根拠は、このブログでも紹介している池谷さんの最新脳科学が教える高校生の勉強法です。

この本では、脳の記憶の仕方が思春期あたりを境に変化するということが書かれています。(詳しく知りたい人は是非読んでみてください)

そしてその方法とは、思春期以前の脳は、全く意味のないものを覚えることが得意で(例えば九九)、それ以降は関連付けながら覚えることが得意になっていくとのことでした。

言語というものは完全に文法通りにいくものではないので、大人の場合、関連付けながら学習していくため完全には習得できないのでは?っというのが今の僕の考えです。

一つだけ覚えておかなければいけないことは、これらの臨界期に関する研究で想定されている「完全に使いこなせる」というのは母語話者と同じように使える、という意味なので、学習していくことで十分上級者になることもできるし、「勉強しても無駄だ」という意味ではないことを覚えておいてください!

次に学習開始年齢について見ていきます。

学習開始年齢と第二言語習得の関係については、これまでの研究の結果からいうと、第二言語習得においては年少者が、外国語習得については年長者が有利という研究結果が出ています。

その理由は、第二言語習得の場合には目標言語に接する機会が十分にあるため、最終到達度ultimate attainment)で子供の方が有利になる一方、外国語習得の場合にはそのような言語接触の機会がほとんどないため、認知能力の高い大人の方が早く習熟度が上がるため有利になると考えられています。

第二言語環境で学習するなら、どんなことも素直に吸収していく年少者の方が有利で、限られた学習時間しかない外国語環境の場合には、考えながら学習できる年長じゃの方が有利ということですね。

これまでの研究で出ている結論では、「年長者の方が初めの段階では習得スピードが早いが、時間が経つにつれて年少者に追い抜かれていく」、言い換えると、「Older is faster, younger is better」という考えが一般的になっています。

というのが第二言語学習と年齢の関係です。

では今回はこれぐらいで!

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