第二言語習得論

【第二言語習得論参考書】ことばの習得(鈴木孝明・白畑知彦)レベル別評価


オススメ度

★★★★★


評価と感想

英語学習の参考書でけでなく、第二言語習得の参考書に関しても紹介していこうと思います。



この本は、前書きにも書かれている通り、日本人で第二言語習得を学びたい人のために書かれた本です。

著者の鈴木孝明さんは、「ことばと文化」の著者でもあります。(聞いたことがある人は多いと思います)



僕はもともと大学での専攻が法だったため、第二言語習得に関する知識を大学で勉強する機会はありませんでした。

なので自分で勉強するしかなかった。

アマゾンで適当に第二言語習得に関する本を買い漁ったなかの一つがこの本です。



結論から言うと、めちゃくちゃオススメの本です。

全く知識のなかった僕でも幾つかの有名な概念をまなぶことができました。

また、他の本と1番の違いは、母語習得に関しても書かれていることです。



この本は2部構成になっていて、母語習得と第二言語習得で分かれています。

母語習得研究でしか用いられることがない条件付き振り向き法(conditioned head turn)や選好聴取法(preferential looking)などの研究方法についても書かれています。(まだまだ読んでいる本の数は少ないですが、これらのことについて書かれていたのは今の所この本だけでした。)

個人的にこれがめちゃくちゃ助かりました・・・笑

ちょうど今受けていた授業が母語習得の授業だったからです。



母語習得のパートでは今述べたような実験方法や、子供の言語発達の流れ、言語のリズム、名詞を獲得するための制約、マザリース、さらには、二代理論である、「原理とパラメータのアプローチ」と、「用法基盤モデル」の比較について書かれています。

また、第二言語習得のパートには、母語習得との違い、中間言語学習者要因、フォーカス・オン・フォームについてのことが詳しく書かれています。



全体的には基本的な話が多いので、これから第二言語習得に関して学習しようと思っている人は、是非読んで欲しいと思います。

逆に、基本的なことをすでに知っている人には少し物足りないかな、と感じる本だとお思います。



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【第二言語習得論】幼児の音の分節化の方法(遷移率やリズムについて)

みなさんこんにちは。

今日は幼児がどのように、音を識別していくのかについて書いていきます。

どちらかというと、幼児に関することなので、第二言語習得というよりは、母語習得第一言語習得)に関することですが、第二言語習得論は母語習得の考え方に影響されているので、是非理解しておいてください。



みなさん、赤ちゃんがどのように音を判別するのか気になりませんか?

「何言ってんこいつ」ってなるかもしれませんが、これ、考えてみるとかなり高度なテクニックなんです。

例えば僕たち日本人の大人は、

「きのうともだちとごはんをたべにいったあとからおけにいきました」

この文章を耳で聞いた時(おそらく今読んだ時もそうですが)、どの部分が切れ目で、どのような文構造になっているのかきっちりわかります。

「昨日 友達 と ご飯 を 食べ に 行っ た 後 カラオケ に 行き ました」

こうなることが理解できるはずです。

なぜなら、僕たちは「昨日」という名詞や、「と」という助詞について知っているため意味の切れ目が理解できるんです。



しかし、赤ちゃんはどうでしょうか。

もちろん単語については全く知識がありません。

つまり、今例で挙げた発言を毎日毎日聞いているだけで、どのようにして文章の切れ目の理解(音の文節化 word segmentation)ができるようになるのだろうか、というのが音の文節化についての問題です。



まず一つ目の考え方は「遷移率 transitional probability」です。

遷移率


遷移率とは、「ある語の次に特定の音素が来る確率」と定義されています。

「なんじゃそりゃ」ってなると思うので例を挙げてみましょう。

「たまご」という日本語の名詞を考えてみましょう。

僕たちがこの単語を用いる時には必ず「た」の後に「ま」が続き、そのあとに「ご」が続きます。

つまり、「たまご」という単語内では、「た」の後に「ま」が続く遷移率は100%で、「ま」のあとに「ご」が続く遷移率も100%ということになります。

言い換えると、名詞などの単語内での遷移率は基本的に100%になります。(文章内でもおそらく「の」の遷移率などは高そうですよね)

なので、赤ちゃんは何度も繰り返し聴いているうちに、この遷移率を意識して音の文節化を行っているのではないのかというのが「遷移率」を主張する人たちの意見です。



しかし、英語でも日本語でもそうですが、動詞などは語尾が変化します。(英語だとsやedがついたり、日本語でも活用変化がありますよね)

っということは、遷移率だけでは音の文節化を切り出すことはできないのでは、ということになり、近年有力になってきている考え方が、リズムに基づいた文節化です。



リズムに基づいた文節化


リズムに基づいた文節化は大きく分けて3つあります。



強勢リズムstress-timed rhythm

音節リズムsyllable-timed rhythm

モーラリズムmora-timed rhythm

(詳しくはことばの習得 [ 鈴木孝明 ]



まず①の強勢リズムとは、英語やドイツ語のように「一つの強勢とそれに続く強勢のない部分にはほぼ一定の時間が費やされる」リズムです。

例えば強勢リズムの言語では


Ken, Kenny, Kennedy

この3つの単語の発音時間はほぼ同じになります。(赤字がストレスです)



②の音節リズムには、フランス語やスペイン語が当てはまり、このリズムの言語では「母音と子音の組み合わせから鳴る音節でリズムが刻まれ、一つの音節に対して同じ時間が費やされる」、と言われています。


先ほどの例を使うと

Ken, Ken・ney, Ken・ne・dy

というリズムの刻み方です。



③のモーラリズムは少し特殊です。

②の音節リズムを見た時に、「それ日本語もちゃん?」って思った人もいるかもしれませんが、日本語はこのモーラリズムに属します。

モーラリズムの言語では、「モーラ」というものが一つの単位として考えられ、このモーラには「ん」などの撥音便や「っ」などの促音便も一つのモーラとして考えられます。(この撥音便、促音便などが入る点が音節リズムとの違いです)


先ほどの例を使ってみると

  Ken,       Kenny,         Kennedy
「ケ」「ン」  「ケ」「二」「ー」 「ケ」「ネ」「ディ」「ー」

となり、一つの単語に費やされる時間が全て変わります。



っというようなリズムに着目して、幼児は少しづつ文節化を行っていく、というのが今一番強い説です。



では、これがどうして第二言語習得に使えるのか、というと、モーラリズムの日本語使用者の人間が、強勢リズムの英語を聞いた時、たとえ同じ単語でも費やされる時間が異なります。

つまり、強勢リズムに慣れていない日本人は、聞き取りの時、無意識にモーラリズムの聞き取り方で聞こうとしてしまうんです。

これが日本人のリスニング力の低さの1番の原因です。(リーディングでは音は関係ないため、聞いて分からなくても読んだら分かるということはよくあると思います)



言い換えると、日本人はリスニングが苦手というよりも、「英語の聞き方に慣れていないため、聞き取り方が間違っている」、というほうが僕は正しいと思います。

リスニング力を上げたい人は、まず、日本語と英語の違いを意識して聞き取りの意識を変えてみてください!



っということで、これぐらいで。



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【第二言語習得論】クラッシェンのインプット仮説(モニターモデル)

今日はクラッシェン(Krashen)のインプット仮説(input hypothesis)、またの名をモニターモデル (monitor model)について書きたいと思います。

SLA(second language acquisition)研究における、基礎の全てがここにあると言っても過言ではないほど、超絶有名な理論です。



まずこの理論はクラッシェンというおじさんによって1977年に考案されました。

考案された当時は理論の一つとして考えられていたんですが、今では彼の唱えた言語理論で、言語習得に関する複数の問題を包括的にあつかった5つの仮説を総称してインプット仮説と呼んでいます。(なので5つの中の1つはインプット仮説です)



ではその5つの仮説とは何か。

習得・学習仮説(the Acquisition-learning hypothesis)

モニター仮説 (the Monitor hypothesis)

自然習得仮説 (the natural order hypothesis)

インプット仮説 (the Input hypothesis)

情意フィルター仮説 (the Affective filter hypothesis)

です。



では一つづつ見ていきましょう。



まずは習得・学習仮説(the Acquisition-learning hypothesis)

この仮説では、人が第二言語を学ぶ際には、二つの学習過程があると考えています。

一つは習得、もう一つは学習です。

では一体この二つはどう違うのか。

クラッシェンは、赤ちゃんが母語を獲得したように、無意識に行われる言語理解のことを習得と名付けています。

僕たちは子供の時に日本語を学習する時、「動詞が名詞に接続する場合には連体形になる必要があるから語尾を変化させて接続しなければならないな」、なんてことは考えませんでしたよね。

そんな子供嫌です・・・笑

僕たちは日本語を自ら勉強して、獲得したのではなく、無意識に習得したと言えます。

これに対して、クラッシェンは意識的に言語理解をしようとすることを学習と名付けました。

例えば英語で、関係代名詞を理解するために文法書を購入して読んでみる、というような行動はこちらの学習に当てはまります。

クラッシェンの理論では、学習で得られた知識は、習得された知識に変わることはない、と主張しています。



次にモニター仮説 (the Monitor hypothesis)です。

クラッシェンは、モニター仮説のなかで、習得で得た知識のみが、実際のコミュニケーションの時に使用され、学習によって得られた知識は、コミュニケーションを行う際、自分の生み出す話し言葉が正しいかどうかを判断(モニター)するためだけに利用される、と主張しています。

さらにこのモニターを使うためには。3つの条件が必要であると言われています。

それは

①規則を知っていること

②言語の正確さに焦点が当てられていること

③モニターを働かせるのに十分な時間があること

の3つです。

例えば自分が”I go to the park yesterday.”という文を発しようとした時に、自分でそれが間違いで、”I went to the park yesterday.”である、ということに気づくためには、①過去を表す時には原形を使えないという知識を知った上で、②その分が正しい文なのかを意識し、③それを直すための時間(次々と話す必要がない状況など)がある場合には、学習によって得られた過去形の知識をモニターとして利用することができ、その結果自分の間違えに気づき、修正した後に言葉を発することができる、ということになります。



次は自然習得仮説 (the natural order hypothesis)です。

クラッシェンは第二言語の習得順序は、第一言語の習得同様、決まった順序で習得されると主張しています。

例えば三単現のsは中学一年生の時に学習する内容ですが、かなりの英語上級者になっても、会話の時に三単現のsが抜けることがあります。

この三単現のsは習得順序的には後に位置しているために、英語上級者を含む多くの人が理解できていても間違えてしまう、ということになります。

しかし、気をつけなければいけないことが一つあります。

この習得順序は母語の影響により、学習者の第一言語によって変わる場合もあります。

例えば冠詞に関しての習得順序は比較的早い段階に位置していますが、冠詞を持たない母語の学習者、僕たち日本人の場合には冠詞の習得は遅れてしまします。

一方で、習得順序では後のほうに位置している所有格のsに関しては、日本語の所有格と使い方が似ているため、日本人は比較的早い段階で習得できる、ということになります。



次はインプット仮説 (the Input hypothesis)

おそらくクラッシェンの中で一番有名な理論がこのインプット仮説です。

言語習得は理解可能なインプット(仮に自分のレベルをiとすると、そのレベルよりも少し難しいもの(+1)、つまりi+1のインプット)を繰り返すことによりおこなわれ、文法の学習やアウトプット(話すこと)などは第二言語習得に直接的には関係しないという考えです。

言い換えると第二言語習得のためには、インプットだけで十分、ということです。

僕がオススメしている音読の方法は、このi+1のインプットに基づいてオススメしています。(音読法



最後の一つは、情意フィルター仮説 (the Affective filter hypothesis)です。

これは、人間には「情意フィルター」というものが存在し、学習に対するネガティブな感情、例えば自分の学習方法を不安に思っていたり、学習に対するモチベーションが低かったりすると、この情意フィルターが高くなり学習効率が悪くなってしまう、逆に自分の学習に対して自信を持っていたり、モチベーションが高いと情意フィルターは低くなり、学習効率が高まるというものです。

イメージとしてはろ過装置にインプットを通した後、残ったものが実際に習得されるというイメージです。

情意フィルターが高くなれば高くなるほど、ろ過される量が増えていくので習得率は減っていく、という感じです。(英語上達の極意で述べている情意フィルターとはこのことです)



この5つがクラッシェンの主張しているモニターモデルですが、読んでいて感じた人もいるかもしれませんが、もちろん問題点もあります。



まずは習得と学習に関しては、学習されたものでも実際にコミュニケーションとして使われるという点です。

例えば、分詞を学習した後、実際にそれを何度も使用することで、無意識に使えるようになります。

文法を学習する理由の一つはそれですよね。

スポーツなどと同じように、繰り返すことで無意識に使えるようになります。

つまり、クラッシェンの主張する、学習で得られた知識は、習得された知識に変わることはないという考え方には問題点があるように感じられます。



また、第二言語習得のためには、インプットだけで十分という考えにも問題点があります。

実際に、母語とは異なるテレビだけを見て第二言語を習得した子供が、その言語を聞いた場合には完璧に理解できるが、実際にその言語を話すことはできない、というような「受動バイリンガル」と呼ばれる例も出てきているので、インプットだけでは第二言語はマスターできない、というのが現在の見解になっています。



その他にも様々な批判や問題点もありますが、言語学における複数の問題に一気に対処しようとした初めての理論であり、現在の研究にも大きく影響を与えている、ということを考えると、この理論の凄さがわかると思います。



っということで、長くなりましたが、これがクラッシェンのモニターモデルです。



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【第二言語習得論】第二言語習得論を学ぶ利点 

みなさん、第二言語習得論って聞いたことがありますか?

高校生までの人たちは恐らく知らないと思いますが、大学生以上の英語を専門にしている学部の人たちはおそらくご存知でしょう。



僕が今イギリスで学んでいるのもこの第二言語習得論に関してです。

実は第二言語習得論は、まだまだ日本では完全には取り扱われていないので、英語の本を読まなければ知ることのできない理論なども沢山あります。

また日本語で説明されている本でも、内容が固すぎてわかりにくいものがものすごく多いです。

なので、ここでは第二言語習得論に興味のある人が、少しでも理解しやすいように、僕が学んでいった知識を少しづつ提供していきたいと思います。

もちろんUG(ユニバーサルグラマー)などの基本的なものから、上で述べたような、英語の本にしか載っていない理論まで取り扱っていく予定なので、興味のある方は是非読んでみてください。



インプット仮説(モニターモデル)
幼児の音の分節化の方法
言語獲得理論(生得性と領域固有性)
母語の転移(Language transfer・Cross-linguistic influence)
年齢の影響・Lennebergの臨界期仮説(Critical period Hypothesis)
母語習得と第二言語習得の主な類似点と違い
教授法の変遷とフォーカスオンフォーム
フォーカスオンフォームの種類と代表的なタスク
赤ちゃんの言語発達①「音の知覚」
赤ちゃんの言語発達②「言語産出」
赤ちゃんの言語発達②「言葉の理解」
「センス仮説?」10ヶ月間の学習を通しての言語習得に対する自分なりの結論